胸キュン!恋愛ストーリー
- 手が触れるだけで体が熱くなる……これが恋の始まり
- ■何気なく入ったスタバで
とある日、長年可愛がっていた飼い猫が死んでしまいました。あまりの悲しさに静かな場所にはいられず、どこか賑やかな場所に行きたいと思い、地下鉄に乗りました。
アーケードの両脇は屋台の行列。屋台にはオレンジ色がかった電気がついていて、ジッと見つめていると少しだけ気持ちが和らぎました。
チョコバナナやポップコーン、綿飴などがお行儀よく店頭に並んでいましたが、全く空腹感のない自分にとって、それらはまるでレストランの前に展示されている見本のようにしか見えませんでした。さめた気持ちで歩き続けると、数メートル先にあの有名なスターバックスのロゴが見えました。
その日は、酷暑と呼ばれるほどのモーレツな暑さ。「そういえば、喉が渇いたな…」と冷たいものへの欲が出てきたのを感じると、中へ入りました。
「いらっしゃいませ!こんばんはーッ!」と元気な声が聞こえてきました。
「すごい人ですよね~」「お仕事帰りですか?」と、ショートの似合う女性店員に親しみのある口調で話しかけられ、思わず、別に飲みたくもないクリームがたっぷりかかった「フラペチーノ」を注文してしまいました。
■目の前に現れたイケメン店員と手が触れ合って
「まったく、どうしてこんなもの頼んだんだろう」と思いながら、ドリンクが出るというカウンターで待っていると、「フラペチーノをご注文のお客様、お待たせしました!」と、ハスキーな、でもどこか軽さのある声が聞こえてきました。
「ずいぶん歯並びがいいな」と頭をもたげると、イケメン君がいました。こちらを見るその眼差しにまるで吸い込まれていくようでした。
「えっ?ああ、私です」と、しだいに速くなる心臓の音に自分で驚きながらも、相手にバレないように前方に5歩くらいの距離をつくって、ドリンクを取ろうと手を伸ばしたその瞬間――イケメン君の指先が私の右手の甲に触れました。何を思ったのか、私は思わず手をひっこめてしまいました。
「あっ!」と思ったのも後の祭り、フラペチーノは私たちの手をすり抜けて床に落ちてしまいました。
ポケットティッシュをあるだけ取り出し、焦って床を拭いている私の横に、いつの間にかイケメン君がいました。
まるで彫刻刀でけずったような彫りの深い目と高い鼻。「すごい、タイプだ」と、ドクンドクンと心臓はさらに速度を増し、床を拭く手は震えていました。
「こちらで拭くから大丈夫ですよ」と、そのイケメン君は手を左右に動かしました。すると、不規則に動く私の手に再び、その手があたりました。
「えっ?何?この感覚?」
体の真ん中辺りが、ギューッと熱くなりました。それが、恋の始まりでした。
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